さらに、手術のもう一つの進歩が、手術の低侵襲化にある。

「皮膚切開を7~8センチと小さくし、筋肉などの組織をできる限り傷つけない最小侵襲手術(MIS)が広がり、患者の負担を減らし、早期の回復と社会復帰を可能にしています。MISでは見えにくい部分を手術しますが、ナビゲーションを用いることでより安全・正確に手術できるようになりました」(同)

 ナビゲーションは、機器の設定のために手術時間が長くなる点がデメリットとなる。また、術者が習熟するまでには時間が必要だ。

「導入率はまだ主要な施設のうちの10%程度まででしょう。ナビゲーション手術は過去に手術歴がある人や変形が高度な人などで、複雑な股関節を手術する場合に、とくに有用な武器となります」(山本医師)

 THAの手術法には、前方法、後方法、側方法など、各病院で進入の位置に違いがある。リハビリの進め方により入院期間も異なるため、説明をよく聞いておこう。

 手術後は痛みがほぼなくなり関節の動きがよくなって、生活が一変する。しかし、脱臼に注意する必要がある。足を両側に開いて座るあひる座りや、関節への負荷が大きいランニング、競技中にぶつかり合うスポーツなどは避けたほうがよい。

「一生自由に動けるよう、術後のフォローアップとして、半年~1年に1回程度は人工関節に異常がないか、病院での確認を忘れないようにしましょう」(同)

 心身を健康に保つため、THA後も適度なスポーツ活動が推奨されている。

「患者が人工股関節が入っていることを忘れることがこれからのTHAの目標です」(稲葉医師)

(文・坂井由美)

※週刊朝日2020年12月11日号より

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