「おや?」と思って立ち止まる。そしてはじまる旅の迷路――。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界を歩き、食べ、見て、乗って悩む謎解き連載「旅をせんとや生まれけむ」。今回は、タイの入国について。
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カンボジアに少し滞在してタイへ。いまミャンマー国境のメーソトにいる。コロナ禍の旅……。今回はスムーズにいくかと思ったが、薄氷を踏むようなタイ入国だった。
前号でカンボジアのプノンペンからバンコクまで、LCCのエアアジアに乗ると伝えた。ところが日本出発3日前、一通のメールが届いた。フライトキャンセルの通知だった。
僕はネット系の旅行会社を通して航空券を買っていた。運賃は7940円だった。その会社からも電話が入った。日程変更は無料でできるという。次の便を訊いてみた。
「次の週になります」
「はッ?」
日程的に難しかった。キャンセルすることにした。運賃は返金されることになった。
コロナ禍の旅だった。飛行機の便数が減っている。慌てて別便を探した。次に安いタイスマイルという航空会社の便があった。しかし運賃は1万2000円ほどになってしまう。しかたない。その便をとった。
問題はタイへの入国許可にあたるタイランドパスだった。サイトを通し、パスポート、ワクチン接種証明、保険、最初の隔離ホテル1泊分のバウチャーを添えて申請する。隔離ホテルの料金には入国時に受けるPCR検査代も含まれている。
すでに許可は受けとっていたが、タイへの飛行機が変わると再申請になってしまう。大急ぎで申請したが、いつ返答がくるかわからない。以前は5日ほどかかった。カンボジアで受けとることになるのだろうか。許可されなかったらどうなるのか。
幸い、日本出発前日に許可のメールが届いた。胸をなでおろし、日本を出発した。
ところがカンボジアからタイに向かう2日前、またしてもフライト変更に見舞われる。僕が乗ろうとした3月4日の便が欠航になり、3月5日の朝便に変わるという連絡だった。