TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。俳優、佐藤浩市さんについて。
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俳優佐藤浩市は、三國連太郎、三船敏郎、高倉健、原田芳雄ら希代の頂(いただき)に連なる日本映画主役の顔である。
彼の映画を観て育ったという映画監督三島有紀子は「浩市さんが(スクリーンに)現れた瞬間に純度が高まり、椅子に座り直してしまう」と言う。
『青春の門』『KT』『64−ロクヨン−』、TVドラマなら『官僚たちの夏』など、深い洞察に裏付けされた演技は現代史の扉を開き、戦後ニッポンの群像をつまびらかにしてきた。
ほれぼれする男っぷりと少年のはにかみ。趣味は「佐藤浩市」というほど、僕にとって彼の存在そのものが時代の指標(メルクマール)になっている。
そんな浩市さんが歌手としてアルバムを出した。歌うのはブルース。タイトル『役者唄 60 ALIVE』のリードには「役者だから歌える唄がある」と記されていた。
「二十歳を過ぎた頃、原田芳雄さんのライブを初めて観ました。歌の上手さが図抜けていてね。段違い。表現力が違う。そのうち芳雄さんのステージで歌わされるようになったんです」
50歳の手習いで歌をはじめ、(原田さんの誕生日2月29日開催の)原田芳雄追悼ライブにも立ち、還暦を機に企画されたアルバム作りはコロナで流れかけたが、「芳雄さんの歌を中心にとの話になり、彼の歌を歌い継げるならと腑に落ちた」。
「ONLY MY SONG」「DON’T YOU FEEL LONELY?」「朝日のあたる家」「ブルースで死にな」……。これら名曲が青山のブルーノート東京で一発録りされた。
「横浜ホンキー・トンク・ブルース」の間奏ではこう語りかけている。
「昨日良かったのが今日は駄目、今日駄目だったのが明日良くなるかもしれない。そんな中、苦しいこと悲しいこと、嬉しいこと全部ひっくるめて人に伝える。そのために自分たちがいる。来年も皆でここにいられる日を祈っています。“We Love Music, We Love Movie!”」