3回目のワクチン追加接種を受ける医療スタッフたち
3回目のワクチン追加接種を受ける医療スタッフたち

 実は、昨年8月末の時点で、すでに英国の公衆衛生当局の研究結果から3回目の追加接種が必要になることが予測されていました。米国のファイザー製あるいは英国のアストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンを2回接種した100万人以上を対象に、2021年5月から7月の間に新型ウイルスのPCR検査で陽性となった人のデータを用いて解析したところ、日本で主に接種されているファイザー製ワクチンによる感染予防効果は、2回目の接種から1カ月後には88%、半年後には74%に低下していたのです。

 昨年8月から追加接種が開始されていたイスラエルから、追加接種の効果について昨年12月に報告されました。イスラエルの約116万人を調査したところ、ファイザー製の新型コロナワクチンの3回接種は2回接種に比べ、重症の新型コロナウイルス感染症をより防いだというものでした。他のイスラエルの調査で、3回接種した人は2回接種の人と比較して、新型コロナウイルス感染症の死亡率が10分の1で済んでいたことも報告されていました。

 このような報告があったにもかかわらず、8カ月経過していないいと追加接種できないという根拠はないにもかかわらず、日本では、原則8カ月以降でないと3回目の追加接種を打つことができないことが決まってしまいました。案の定、欧米から遅れること1カ月強、オミクロン株の感染が急速に広がってしまったのでした。日本も早く接種を終えていた人から接種を開始していれば、第6波はこれほどひどくならかなった可能性も十分あると思うと、残念でなりません。

 昨年の日本での新型コロナウイルスの流行の推移を見てみると、この冬のオミクロン株の流行の前は、昨年の8月末にピークがありました。今年も同時期に流行がある可能性があることや、第6波は終息しつつあること、3回目の接種による効果が約半年後には落ちてしまうこと、新型コロナウイルスワクチンの接種回数を増やしたところでオミクロン株や他の変異株の流行の解決にはならないかもしれない報告結果を考慮すると、今となっては3回目の追加接種を急ぐ必要はないでしょう。

 厚生労働省は、今年の9月30日まで追加接種が受けられるとしています。まだ追加接種を受けていない方、これから追加接種を受けようと考えている第6波で新型コロナウイルス感染症に感染した方には、私は4月中旬からや5月にかけて追加接種を行うことををおすすめしたいと思います。

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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