週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
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■高齢者に治療拡大傾向も、治療リスクを慎重に考慮

 脳ドックなどで未破裂脳動脈瘤が見つかった際、治療の是非を考えるときには「破裂リスク」の見極めが肝心だ。脳神経センター大田記念病院の大田慎三医師はこう説明する。

「年齢や性別、高血圧症の有無、瘤の大きさや場所、形状から破裂率をスコア化し、ガイドラインと病院の治療方針に基づいて総合的に判断し検討します。多くの場合、もともと元気な人に大きな外科的侵襲を加えるため、治療に伴うリスクを慎重に考慮しなければなりません」

 合併症などの治療リスクも伝えたうえで本人の意向を尊重し、治療が検討されるが、多くの場合で経過観察となるという。

 とくに高齢者では、強い希望がないかぎり、自然破裂率、治療に必要な体力、寿命なども考慮して治療しないことが多い。

 治療する目安について、横浜新都市脳神経外科病院の森本将史医師は、70歳以下で瘤の大きさが5ミリ以上、家族歴や複数の動脈瘤がある場合と話す。

「これらの基準を満たさない場合も、破裂が心配な人には治療を検討することもあります」

■血管内治療と開頭術はメリットで使い分ける

 治療が決まれば、次は治療方法の選択だ。血管内治療と開頭術の二つがあるが、近年はデバイスの進化や患者の高齢化に伴い、より低侵襲で治療リスクの少ない血管内治療のニーズが高まっている。治療法の使い分けについて、森本医師はこう話す。

「瘤と正常血管の境界(ネック)が広く不鮮明な瘤や、瘤から重要な血管が分岐するもの、破裂した微小な瘤は開頭術が適しています。根治性が高く、同じ部分の再発リスクは血管内治療よりも低い。ただし、血管内治療より侵襲は大きく、75歳以上では開頭術は避ける傾向です」

 大田医師もこう述べる。

「リスクが同等なら、できるだけ血管内治療をします。開頭術では術後しばらくは口を大きく開けづらく、食事がしにくくなるなどのデメリットもあるためです」

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