村上春樹さんの原作を映画化した「ドライブ・マイ・カー」が、アカデミー賞4部門ノミネートされ、見事、国際長編映画賞を受賞した。話題となっている。映画評論家の渡辺祥子さんが、海外で絶賛されている要因を分析した。
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今回は「波」に乗った。それにつきますね。映画の賞はその時々に波が来るんです。カンヌ受賞をきっかけに、小さな波がどんどん大きくなっていった。それに乗れたことがひとつの勝因でよかったと思います。
私は観終わって「3時間、長くないな」って思いました。大きな事件はないし、なにより映画にもっとも大切な「山場」がないのにするすると観てしまう。それが濱口監督の独特のスタイル。脚本がうまくなければ、こんなことはできません。
ただ、年に1本くらいしか映画を観ない人にとっては、この映画が「よくわからなかった」と感じられても普通だと思います。やっぱり普通はメリハリも欲しいし、山場も結論も欲しいから(笑)。でも3分の1の人はこの映画の「風」に吹かれて、「よかった」と感じるでしょう。特にさまざまな映画を観てきた人にとってはおもしろいはず。ゆえにアカデミー賞4部門ノミネートという快挙を成し遂げたのだと思います。