彼らが普段のバラエティ番組よりも一段ギアを上げて真剣勝負をしているように見えるのには2つの理由が考えられる。1つは、これがNetflixで配信される大がかりな番組であるから。もう1つは、そこに千鳥がいるからだ。

 千鳥のノブは女性ゲストと共に別室で芸人たちを見守り、要所要所でコメントをいれていく。一方、ドラマパートで主役を演じる大悟は、トークパートではほかの芸人と横並びでトークに参加している。プレーヤーでありながら聞き手として場をまとめる進行役も兼ねているようなところがある。

 芸人として圧倒的な実力を誇り、同業者の芸人からの支持も厚い千鳥の大悟が、自ら死地に飛び込み、真剣勝負をしている。そんな大悟の背中を見て、芸人たちも負けられないと本気になる。作り込まれた舞台装置と「座長」としての千鳥が、いい意味での緊張感を生んでいた。

『トークサバイバー!』を何かにたとえるなら、大悟版の『とんぼ』ではないかと思った。『とんぼ』とは、1988年にTBSで放送されていた長渕剛主演の伝説的なドラマである。生粋の長渕ファンである大悟は、このドラマが大好きで、これまでに何十回も繰り返し見ているという。『とんぼ』では、長渕が自分なりの正義を貫くヤクザを思い入れたっぷりに演じている。

 大悟が『トークサバイバー!』のドラマパートで演じているのも、その役柄に近いところがあると言えなくもない。言動のすべてが「かっこつけすぎてダサい」というボケになっているので、映像を見守るノブがそこにツッコミをいれてはいるが、ドラマそのものはしっかり作られている。

 ひたすら二枚目を気取ってかっこつけている大悟は、とんでもなくダサい。でも、そのダサさが面白いというのは、一周回って芸人として「かっこいい」ということでもある、という二重構造がここには存在する。

 ネタバレを避けるため具体的には書かないが、とある場面で大悟が脱落した芸人たちに発する「悪くはなかった。ただ……(以下略)」というひと言は、ボケでありながら芸人たちの背筋が伸びるメッセージにもなっていて、この作品の二重構造を鮮やかに示しており、個人的にはここでゾクゾクするような興奮と感動を味わった。

次のページ
「笑いの美意識」は心に刺さる