「皆さん、よく勉強なさっています。何の知識もなく来る人は若い方々では少ない印象です」(先の広報担当者)
こうしたことから、若い世代の投資事情に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の風呂内亜矢さんは彼らの「確信」を感じるという。
「厳しい時代に育ってきた今の若い世代は、学生時代から投資や起業をしたり、若いうちから貯蓄に励んだりするなど金融リテラシーが高い人が多い。そんな彼らが『長期・分散・積立』こそ投資の王道であることに気づき、それゆえに大挙してつみたてNISAに来ているようにも思えるのです」
風呂内さんによると、世代ごとのマネー感覚は自分の親の生きざまを見て培われるという。
「若い世代はバブル崩壊後の成長を知らない世代です。その中で苦労している親を見てきたからこそ勉強熱心でリテラシーが高い人が多いのです」
一方、今の50代、60代は日本の成長期に育ち、親も苦労せずに老後を過ごせている。したがって「危機」が迫っていても気づかない人も多い。
老後資金の不安なら、実は今の50代、60代も似たり寄ったりだ。人生100年時代を迎え、これからはマネーの「総力戦」になると指摘されることが多くなった。例えば、今春から始まる年金制度の改正に合わせて刊行された週刊朝日MOOK『年金大改正 得するもらい方・増やし方 人生100年老後資金完全対応』も同じ見方に立っている。老後資金について「(年金繰り下げや節約、運用などを)マネーのパーツとして使いながら高齢期の人生を自分で組み立てていく時代に入った」とし、その一環として「積み立て投資」も重要なパーツの一つになると紹介している。
こうした事情からすると、若い世代の高い金融リテラシーを50代、60代は見習うべきではないか。実際、「長期・分散・積立」は金融庁をはじめ、多くの専門家が投資の「王道」と認めている。風呂内さんも、
「王道ゆえに、若者だけでなく、すべての世代にあてはまる投資法です」
とはいえ、若い人に比べると50代、60代は「時間」が短い。王道をこの世代が生かすとしたら、どうすればいいのか。
「預貯金が大半の人は『分散』を意識するのがいいと思います。預貯金の保有は日本の債券で運用していることとほぼ同義です。とするなら、それと違う資産(「アセットクラス」という)を持つべきで、私は世界中の株式に投資する『全世界株式』で積み立て投資をするのがいいと思います」