岩田健太郎さん(c)水野真澄
岩田健太郎さん(c)水野真澄

 僕に言わせれば、こうした訪問PCR検査は意味がない。感染を防ぐ手立てではないからです。検査と検査の合間に発症する場合もあれば、検査が陰性でも感染している人もいます。ハッキリ言って、コロナ対策を「ヤッテル感」のために人員を割いている気がします。ただでさえ仕事が増えている保健所のスタッフに、ますます責務を課す愚策です。

内田:政策決定者たちが、人間はいくらでもいる。いくらでも替えが利くと信じ込んでいるんでしょう。でも、それは人口が増加し続けている社会でしか通じない話なんです。そして、資本主義というのは「人間は増え続けるので、いくらでも替えが利く」という人口動態を前提にしてはじめて成立する制度です。だから、当然ながら「人口減局面での資本主義」というのを人類は経験したことがない。それがどんなものだか想像がつかない。だから、「人口減」というファクターを勘定に入れて制度設計することができない。

岩田:医療や教育など公共的なセクターにも、資本主義が入り込んでいるんですね。

内田:そうです。でも、公共的なセクターに資本主義が入り込んできたのは、もうそこしか収奪できる領域がなくなってきたからなんです。人口減ではマンパワーが減るだけではなく、マーケットが縮減しますから、これまでのような商品サービスの売り買いだけでは、資本主義が回らない。だから、教育や医療や行政のような「それなしでは人間が集団的に生きてゆけないセクター」に手を突っ込んできて、そこで金儲けをしようとしているんです。

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