ロシアとウクライナはSNS上でも「戦争」を繰り広げている。感情に訴える情報や陰謀論が飛び交うなか、受け手の情報リテラシーが必要だ。AERA 2022年4月11日号の記事から紹介する。
【写真】プーチン氏の顔写真とともに「間抜けなプーチン」の文字が書かれた火炎瓶
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ワンルームの部屋から、サイトをクリックする。それだけで、戦争に参加できるとしたら。
「ウクライナには行かなくてもいいなら、志願したい」
そう話すのは、都内の大学院生だ。SNSを開くたびに飛び込んでくる、戦争によって命を奪われた人たちの映像に胸を痛める日々。そんなとき、ウクライナがIT軍団を募集していると知り、興味が湧いた。
IT軍団は、メッセージングサービス「テレグラム」内にウクライナ政府が立ち上げたチームのこと。ロシアの国内企業のサーバーへの攻撃を参加者に促している。国際情勢アナリストの山田敏弘さんはこう説明する。
「毎日ターゲットが示されて、簡単に戦争に参加できてしまう。ラクだし、お金もかかりません。今この瞬間から、民兵になることができるんです」
IT軍団や民兵という言葉に、縁遠い世界の出来事だと感じるかもしれない。だが、SNSを舞台にした「情報戦」には、すでに多くの人が巻き込まれているという。山田さんは言う。
「リツイートやいいね一つでも戦争への加担につながります。自分が情報に溺れるだけでなく、加害者にもなりうるのです」
■SNSが戦況に影響
軍事侵攻が始まってから、ウクライナとロシアの政府はそれぞれSNSで発信を続けている。戦場の様子を動画で投稿したり、ときには他国に協力を呼びかけたり。どんな意図であれ、その投稿を受け取り、リアクションすることは“参戦”になるというのだ。
たとえば、在日ウクライナ大使館のツイッター。戦況や世界の支援内容をこまめにつぶやき、ときには、
<日本の友人の皆様!>
と呼びかける。東京スカイツリーがウクライナカラーになったというツイートには約12万件の「いいね」がついた。
SNSはネット空間のコミュニケーションにとどまらず、戦況にも影響を与えている。