
ビタミンDは精神を安定させる神経伝達物質セロトニンのスムーズな産生に欠かせないため、これが不足すると憂鬱(ゆううつ)、集中力の低下、疲れやすさなどの「ビタミンD欠乏うつ」を引き起こすことがあるという。
また、体がエネルギーを作り出すには、さまざまな栄養素が必要となる。そのため、食生活の乱れや栄養の偏りが、心身の不調に直接的な影響をもたらすことになる。
「人は体内でエネルギーを作る時に酸素を必要としますが、その過程で活性酸素が発生します。これが増えすぎると酸化ストレスを引き起こします。生活環境が変わる春先は酸化ストレスも増えやすい時期。酸化ストレスに対処するために、亜鉛やマグネシウム、ビタミンDなどの需要が増えるため、意識的に摂るようにしましょう。またストレスが多いと、ストレスから身を守るコルチゾールなどの分泌が増え、それに伴ってたんぱく質の分解が増えるため、たんぱく質も他の時期より多めに摂りましょう」(奥平医師)
メンタルに密接に関わる栄養素はほかにもあり、鉄分も重要だ。前述のセロトニンや、睡眠に関わるメラトニンなどの神経伝達物質を作る時に、鉄は欠かせない。また、脳細胞のエネルギーを産生する時にも極めて重要だ。
「鉄欠乏に陥ると、イライラや憂鬱、疲れやすさ、睡眠障害などの症状が出やすくなります。鉄欠乏が進むと最終的に貧血になりますが、貧血と診断されるまで鉄欠乏に気づかないことが多いのが実情。貧血がなくても、日頃から鉄欠乏だと、季節の変わり目に体調を崩しやすくなるので、普段から鉄分を多く含む魚や肉を食べましょう。鉄鍋での調理や、お湯や煮物に調理用の鉄球を入れて鉄を補充する方法もおすすめです」(同)
(ライター・吉川明子)
※週刊朝日 2022年4月15日号