季節の変わり目に避けて通れない寒暖差についても同様だ。恒温動物である人間は、気温が下がると体内のエネルギーを使って体温を保とうとする。しかし、体力がなければ少々のエネルギー消費でもすぐにバテてしまうことになる。
「調査結果では、女性のほうが不調を感じる人が多かったのですが、男性より女性のほうが、筋肉量が少ないため。筋肉量が少ないと基礎代謝量も減ります。だからこそ、バテない体を作るために適度な運動で筋肉をつける必要があります」(同)
高齢になればなるほど筋肉量が減少するため、本人が少しだけきついと感じるくらいの、適度な運動を週2~3回行い、筋肉量の維持を心がけるだけでもかなり違ってくるという川嶋医師。
「春の心身の不調に限らないことですが、睡眠、運動、栄養のある食事の三つに尽きます。日本は国民皆保険で素晴らしいのですが、逆に『調子が悪くなったら病院に行けばいい』と考える人が多いのも事実。本当に不調に陥ってしまった人は無理せず、回復の過程で医療に頼ってもいいのですが、睡眠、運動、食事は自分で改善することで確実に変わります」(同)
春の不調における栄養の重要性については、山口病院副院長・日本栄養精神医学研究会会長で、栄養専門の精神科医・奥平智之医師もこう指摘する。
「栄養面ではビタミンD欠乏が関与しているといえます。ビタミンDは食物からだけでなく、日の光によって皮膚でコレステロールから生成されるからです。血中濃度に反映されるまで約2カ月かかるため、日照時間が短い12~2月の2カ月後の2~4月に、ビタミンD欠乏の人が最も増える傾向にあります。特にシニア層は若い世代と比べて、皮膚で生成される量が2分の1以下と少ないことに加え、腸からの吸収や体内での利用効率も下がります。そのため、シニア層こそビタミンDを意識して、しっかりと日の光を浴びながら散歩したり、サケや青魚を食べたり、ビタミンDのサプリメントを活用したりしましょう」