なお、リゾ記者の大谷に対する批判的な発言はこれが初めてではない。スポーツ専門メディア『オーフル・アウナウンシング』では、「リゾ記者は大谷が二刀流選手であることはよく知っている。そして、彼女は昨季(6月)はジェイコブ・デグロム(ニューヨーク・メッツ)が大谷同様に同じ打撃数を持っていたらどうなるかと疑問に思っていた」と話していたことが紹介されている。その動画によれば、彼女は、「デグロムが大谷と同じぐらいの打席数があれば、誰が“より最高の二刀流選手”と考えるのは面白いのではないか」と語っている。当時は彼女に賛同する声もあり、「デグロムの方が上だ」とコメントするファンもいた。ただ、今回の発言に関しては、彼女に同調するファンは少ないようだ。

 米に限らず、野球界において最高の選手を決めるのは簡単なことではないだろう。「打者の方が優位」という意見も、現地ではたしかにある。また、MLBは今季から両リーグで指名打者制(ユニバーサルDH)が採用されることとなり、投手と打者は完全に分業されることなった。そのため、ほぼ毎試合に出ない投手がシーズンを通してインパクトを残すのは今後は難しくなるかもしれない。

 もっとも、この決定は多くの現役MLB投手から歓迎されているので、本件とは関係ない話かもしれない。もちろん打席に入ることを好む投手もいる。例えば、前田健太(ミネソタ・ツインズ)は、両リーグDH制導入が決定的になった2月11日、自身のSNSで「I can’t hit a home run in MLB anymore 私はもうMLBでホームランが打てなくなってしまいました」と惜しんでいるぐらいだ。

 しかし、大谷は、前出の「大谷ルール」で、今季も打者を続けることができる。今回、「投手だから」という理由で現地の記者から批判を受けた大谷だが、今季の成績予測によれば、今季の本塁打数は38本(ZiPS)あるいは39本(Steamer)という予想が立てられており、今季中にこういった批判をはね返すことは容易だ。はたして大谷は今季も全米を騒がすような活躍をみせてくれるだろうか、その活躍に期待したい。(在米ジャーナリスト・澤良憲/YOSHINORI SAWA)

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