この記事は無論一例で、とにかく感染しないことだけが個人的にも社会的にも正しいという情報全般に私は違和感を覚える。そりゃかからない方がいいに決まってるが、変異ウイルスで感染者がこれほど増えているのを見れば、基本的な感染対策をしてもかかる時はかかってしまうのだと思う。不注意な、意識の低い人間だけが感染するわけじゃない。いつ誰がかかってもおかしくないのだ。
恐怖情報の最も良くないところは、かからないように注意させる効果が高いほど、「かかったらアウト」という気持ちを増強させてしまうところだ。感染しても後遺症に見舞われても絶望することなく生きていけるような情報や研究成果の発信がもっとあってほしい。社会は病んでいるんだから、ちゃんと優しい情報が知りたいのです。
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
※AERA 2022年4月11日号