写真は本文とは関係ありません(※イメージ写真/iStock)
作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします

 結果的に今回の件で、遠い地で1人きり、やりがいのない仕事をするだけの毎日でむなしくて仕方がないです。2年間を無駄にしてしまい、もう結婚もできないと思います。

 毎日辛くて食欲もなく眠れない毎日です。いまだに好きな気持ちさえ断ち切れないでいます。できることなら、きちんと話し合えれば少しは気持ちの整理もつくと思うのですが、もう連絡手段もありません。

 毎日ふとした瞬間に、色々な感情が混じって胸が苦しくて仕方ないのです。

 あまりにも愚かな話でかける言葉もないとは思いますが、同じような人も多いと聞き、他の方のためにも今回勇気を振り絞って送りました。

 どうぞよろしくお願いいたします。

【鴻上さんの答え】
 ほんだ33さん。大変な目にあいましたね。まさに「高い授業料を払った」状態ですね。

 この言い方、ドラマでもよく聞きます。ほんだ33さんのようにひどい目にあった人を慰める表現で、突き放しているように感じる人もいるかもしれませんが、僕は案外、的を射た表現だと思っています。

 ほんだ33さんは、うんと高い授業料を払っていろんなことを学んだんです。

「結婚したいと思うぐらい人を好きになる気持ち」や「僕がなんとかしてあげたいという愛おしい気持ち」「愛した人と身体を重ねる幸福」「愛した人を幸せにしたいという生きがい」などです。

 だまされたんだから、そんなことは意味がないと思いますか? でも、この2年強の間、ほんだ33さんは、これらの感情や気持ち、生きがいをリアルに感じていたんじゃないですか? その体験と記憶は、今がどうであれ、確かに存在したものなんじゃないですか?

 中学・高校時代、何か部活はやりましたか? 例えばバスケットボール部にいて、3年の最後の試合で負けたからといって、すべての努力が無駄で意味がなかったとは思わないでしょう? たとえ結果は散々でも、1年から練習を続けた体験は愛おしく、貴重なものだったはずです。

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