禁断の種明かしメソッドの極みである「なんてったってアイドル」や、87年紅白で「木枯しに抱かれて」を歌唱した際の奇抜な衣装、そして日本で最初のメジャーアイドルによるハウスミュージックのヒット曲「Fade Out」など、時代の「熱狂」によって築き上げられたのが80年代のキョンキョン像だとすれば、売り上げ的には自身最大のヒットである「あなたに会えてよかった」や「優しい雨」といった、世の中全体の「共感」の上にさらなる巨大現象を確立したのが90年代のキョンキョンです。
もちろん彼女の才能や魅力がずば抜けており、強力で優秀な人たちがプロジェクトに関わっていたことも大きかったとは思います。しかし、何よりもそれを司る人間・小泉今日子の緻密さ・冷静さ・真面目さがなければ、「キョンキョン」という化け物は存在し得なかったでしょう。
そして40年目のキョンキョンは、とんでもなく熱かった。社会人としての意地と責任と凄みがビンビン伝わるステージでした。でもそれ以上に、やはり彼女は根っからの異形。天才。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2022年4月22日号