ブレスト・キャスト(2012年)/「乳がん早期発見啓発イベントに参加した時、制作した作品です。まっさらな石膏を渡されて、自由に描いてと。お気に入りです」(ジミーさん)(写真:ジミー大西さん提供)
ブレスト・キャスト(2012年)/「乳がん早期発見啓発イベントに参加した時、制作した作品です。まっさらな石膏を渡されて、自由に描いてと。お気に入りです」(ジミーさん)(写真:ジミー大西さん提供)

時給換算380円でも

──創作へのモチベーションを常にキープできたわけではない。15年頃から数年間、まったく絵が描けなかったという。

ジミー:ある時、お金の計算をしてもうたんです。自分の収入を時給に換算してみたら380円だった。それで嫌になって、「もう筆を折ろうと思います」とさんまさんやマネージャーに相談したら、「別にええよ」「どうぞご自由に」という感じで。

 一瞬、解放感はありました。でも、それから5年ぐらい経ったある日、さんまさんから何げなく、「お前、絵を描けへんのか?」と言われて。僕が「お金が割に合わないんです」と答えると、「人を笑かしたり、喜んでもらうことに、お金の計算したらあかん」とおっしゃって。

 その言葉で自分の気持ちが整理できて、「もう一度、絵と向き合おう」と思えるようになりました。タレント業でロケへ行くのがしんどくなってきたというのもありますが(笑)。

──こうして再び筆を執るようになった。28歳で絵を描き始めてから30年、その集大成ともいえる展覧会「POP OUT」が4月27日に開幕する。初期の作品から新作まで100点以上を展示、東京・銀座を皮切りに全国9都市を1年超かけて巡回する予定だ。

ジミー:今回の展覧会に合わせて「THE 銀座」という作品を描いたんです。僕は大阪の八尾出身の田舎者なんですけど、18歳の時、さんまさんに初めて東京へ連れてきてもらって。銀座4丁目で和光や三越、歌舞伎座を見てカルチャーショックを受けました。まぶしすぎて、夢しかなかった。木村屋のあんぱんもうまかったなあ。

 あれから時代は変わり、(東京)スカイツリーができたりもしたけど、変わらないものもたくさんありますよね。

「大西君はこれでいい」

ジミー:最近、ふと思い出したことがあって。小学生の時、校舎の屋上で写生大会をしたんです。みんなは煙突を描いたり、遠くの山を描いたりしていた。でも僕はその時、象を描いたんです。空の雲が象の形をしていたから。で、それを見た周りの子たちから「また大西が違うことやってるぞ」とからかわれたんですけど、その様子を見ていた先生がこう言ったんです。「大西君はこれでいいんだよ」って。

 もしあの時、「大西君も山や煙突を描きなさい」って言われていたら、僕は絵を描くことが嫌いになっていたかもしれない。あそこで否定されなかったから、IMALUちゃんと一緒にお絵描きしたりしていたのかもしれない。そう思うと、僕は画家ではなくて、これまでもこれからも、ただの絵描きなんです。

(編集部・藤井直樹)

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