川崎幸病院はもともと、大動脈手術に定評があり、全国でもっとも多く実施している病院だった。大動脈手術を同院川崎大動脈センターが実施する一方で、ほかの心臓病の手術は、同院川崎心臓病センターでおこなっている。
川崎心臓病センターは、心臓外科医と循環器内科医、看護師、放射線技師や臨床工学技士などの多職種で構成され、ひとつの「ハートチーム」として心臓病の治療に取り組む。通常の集中治療室とは独立した循環器集中治療室を設置し、24時間態勢で救急患者を治療できる体制を整備している。
近年はもともと多かった大動脈手術に加え、川崎心臓病センターでおこなう手術の件数が伸びている状況にある。
循環器内科主任部長を務める桃原哲也医師と、心臓外科主任部長を務める高梨秀一郎医師は、2019年に同院に赴任し、川崎心臓病センターでハートチームを作ってきた。赴任前は、循環器専門病院である榊原記念病院の循環器内科と心臓血管外科の臨床現場でトップを務めていた心臓病治療のエキスパートだ。榊原記念病院は2018年の心臓手術数全国1位(週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』)の実績を誇っていた。
桃原医師は、川崎心臓病センターの強みとして、「内科と外科が一体化した診療体制」と「24時間365日対応できること」を挙げる。
心臓病の手術には、救急搬送された患者に対しておこなう緊急手術と、計画的におこなわれる予定手術がある。手術のためには迅速かつ正確な診断が必要であり、また、心臓病は生活習慣と密接な関わりがあるため、術後のリハビリ(心臓リハビリテーション)や退院後の生活管理なども重要だ。循環器内科と心臓外科がひとつにセンター化され、医師だけでなく放射線技師や臨床工学技士、看護師、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなど多職種が連携してひとつのチームとして診療できるメリットは大きい。
また、「断らない医療」は、同院と川崎心臓病センター双方の理念として合致している。救急搬送された患者はまずERに入るが、川崎心臓病センターの当直医もスタンバイしており、24時間いつでも専門的な対応が可能だ。