新聞はどうかというと、病院に朝一番乗りする私が、郵便受けから数紙とって、自室で目を通すのが日課になっていました。また、講演で出張するために東京のホテルに前泊すると、部屋に朝日、毎日、読売、東京の4紙が届いていたのです。

 ところが、数年前から病院が経費節減で新聞をとるのをやめてしまいました。また、コロナで講演が減り、ホテルに泊まる機会が減りました。

 しかし、そんな理由で新聞を読まなくなっても別に不自由はないんです。実は新聞はいらなかったんですね。

『老子』の第四十八章に、「学を為せば日に益し、道を為せば日に損す。之を損し又損して、以て無為に至る」

 とあります。つまり、「学を為す」=情報をため込んでも、「道を為す」ことにはならないんです。

 86歳になって思うのは、もう余分な情報はいらないということです。放っておいても、必要な情報は耳に入ってきます。特に最近のウクライナ情勢など、不条理すぎて聞きたくもありません。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2022年5月6・13日合併号

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