うつ病、統合失調症、不安症といった精神疾患を持つ人の半数は10代半ばまでに発症しており、全体の約75%が20代半ばまでに発症しています。「社交不安症」「全般不安症」「パニック症」は、不安症に含まれます。精神科医で東京都立松沢病院院長の水野雅文医師が執筆した書籍『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)から、不安症について一部抜粋してお届けします。
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【どんな病気?】
不安は不快な感情ですが、不安のおかげでトラブルを回避し、身を守る行動をとることができます。生きていく上で欠かせない感情で、大切な試験の前に緊張したり、心配なことがあるときに不安を感じたりするのも、ごく当たり前の反応と言えるでしょう。
しかし不安が正常範囲を超えてあまりにも強すぎる状態が長く続くと、ふつうの生活ができなくなることがあります。「不安症」と呼ばれる病態では、しばしば治療が必要になります。
不安症は、不安を感じる対象や症状などによっていくつかのタイプに分けられます。
中でもよく知られているのが、高所恐怖症や閉所恐怖症、虫恐怖症など、特定のものや状況を怖がる「限局性恐怖症」です。就学前の子どもが、親と離れることに対して極端な不安を抱く「分離不安症」も不安症の一種です。「パニック症」は多くの有名人が、この病気の患者だと公表しています。「社交不安症」「全般不安症」といった不安症もあります。
不安症の患者さんはとても多く、日本における不安症全体の推定患者数は、うつ病やうつ状態の患者数を上回るという報告もあります。
【原因】
不安症の原因ははっきりとはわかっていませんが、不安に対する強い感受性など、もともとある「なりやすい体質」に、ストレスといった「環境的な要因」が加わって、病的な不安に発展すると考えられています。とくに10代、20代といった若い世代は体も心も不安定で、SNS を通した誹謗中傷や、いじめ、受験、恋愛や友だちとの関係がうまくいかないなど心配の種をたくさん抱えています。人前で恥をかいたなど、失敗体験がきっかけで発症するケースもあります。