■千切りネギを用意せよ
お酒にも合う小皿料理を楽しみつつ、西勝佐江さんの父が昭和時代、徒歩徒歩亭と名付けた屋台で出していた中華そばで締める、そんなオシャレな中華料理店として知られた。
19年ごろからはランチ中心に営業する“食堂”へと徐々に転換。そこへやってきたのがコロナ禍だった。スペインのバルをヒントに、店先にテイクアウトができるショーウィンドーを作る以前からのアイデアを実現。同時にスタートしたのが、冷凍メニューの通販だ。ラインアップは、看板料理の「シュウマイ」「わんたん」「四谷春巻」の3種類のみ。無添加、手作りの作りたてを急速冷凍し、そのままの味を全国に届けている。
「常連さんや近所の人が買いに来てくれたり、贈り物用に注文してくれたり。テイクアウトや通販を始めて、みんなに助けられていることをあらためて感じています」(西勝さん)
例えばわんたんは、たっぷりの湯でゆでて、プリプリに。お店での食べ方同様、ネギの千切りや豆板醤(トウバンジャン)を用意して酢醤油でいただく。ご主人の希望も、おいしさの味付けだ。
パンやケーキの名店の冷凍お取り寄せもやってみた。東京・南青山に本店があるベーカリー、d’une rarete(デュヌ・ラルテ)。「お家で簡単ラルテ(クロワッサン)」は、焼く前の生地が冷凍で到着する。
ギョーザの皮のような「成形前」タイプなら、自分で簡単な形を作ってオーブンに(成形済みタイプもあり)。正真正銘焼きたてのクロワッサンが味わえる。さっそくやってみると、バターの幸せな香りが口のなかいっぱいに。冷凍技術と物流の進化に感謝した。
■1ホールをペロリ
最後はミシュラン一つ星のフレンチレストラン「sio」のチーズケーキだ。
完全招待制で入手困難だったプレミアスイーツが「冷凍良食」というサイトで購入できるようになった。3時間ほど自然解凍し、切り分けたあと、「塩とオリーブオイルのマリアージュを楽しむのがsio流」とある。
さっそくマリアージュしてみた。溶けるような口溶けのチーズケーキと、塩とオリーブオイルが、まさに融合! いかん、お店のように人の目がないだけに、何なら1ホール、一人でペロリ……って、誰か止めて!(ライター・福光恵)
※AERA 2022年5月-9日合併号