そんなわけで、2週間、できれば2カ月は無理しない方がよさそうだ。ここでしっかり休養するかしないかが今後の健康を左右しかねない。無為を愉(たの)しむ趣味があるが、第三者から、無為を強制されると途端に自由を束縛されたような気分になってしまう。仕事の制約と同時に、人と会うことも外出も禁じられた。まあ、そこまで病人の健康を管理していただけるのは有り難いが、見たところは普段と変らないのである。ただコロナ以後、ちょっとした動作によって息切れがするという老化現象が気になっている。退院してすでに10日以上経っていて、その間、身体の大きい変化はないので安心はしているが、第三者に強制された無為は実に退屈である。読書の趣味があれば、そちらに逃避できるが、その趣味はない。ビデオを見るとしても難聴で音声は聞こえないし、映画一本を見る体力というか忍耐力はない。画家は結局、絵を描く以外、無用の長物です。絵を描くのが飽きた、嫌々描いているといっても結局、絵以外のことはできないのです。先の日展出品者の画家も絵以外のことには興味がなく、先生から禁じられていたにもかかわらず、その禁を破って絵を描いたために、再度病状が悪化して入院までしてしまったのです。本当に画家はつぶしがきかず、売れもしない絵ばかり描いているのです。

 何をやっても思考は絵に還元されてしまい、絵を越える何かというものが見当らないのです。僕の考えが画家を代表するとは思いませんが、絵ほど何の役にもたたないものはないんじゃないかと時々思います。この何の役にもたたない、目的も理由も大義名分もないことに血道をあげる商売なんです。しかも見えないものを見えると信じて描いたり、科学や理論が証明できないものをあたかも存在していると信じて描く、端から見ればただの変人、奇人です。そんなことを僕は5歳の頃から毎日やっているのです。そして、その結果が急性心筋梗塞なんです。

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