同じ店で働く全国勤務の社員は、休日や休憩時間も返上で働くことが珍しくない。Bさんが心配すると、「この仕事をやっている限り、仕方がないことだから」と言う。その社員は、他店で急に辞めた人の代わりとして、本部から2週間前に店舗異動の辞令が下り、引っ越し準備もままならない中で他県の店舗へと移っていった。そんな働き方が当たり前のようにまかり通っている会社は、まだまだ少なくはない。「自分はもう、選ばない選択肢だな」とAさんは思った。

■「本当にこれで良いのか」見直すことができた

 収入が大きく減った分、以前にも増して家計のやりくりを工夫するようになった。「使えるお金はここまで」と設定すると、なんとかその中でやりくりするようになる。そうやって算段を続ける中で、お金の大切さをしみじみと感じる一方、「以前はお金に踊らされていたな」とも感じるという。

 無論、老後まで先を見据えて考えると、今後のお金に対する不安がないわけではない。子どもがいないからできる選択肢とも言われるかもしれない。だが、それだけではない。

「振り返ると、以前は労働と時間とのバランスが取れてなかったことを、見て見ぬ振りしていた自分がいました。本当にこれで良いのかなと見直せたことは、コロナで一度、世間がストップしたおかげとも言える。これからは時間を大切に、家族と好きなことをして生きていきたい」(Aさん)

 コロナ禍の影響から、働き方や会社の選び方に大きな変化が起きている。リクルートが昨年転職者を対象に行った調査によれば、「新型コロナウイルスが転職活動のきっかけになった」と答えた人は、全体の63.5%。仕事選びにおける重要項目も変わってきており、「やりたいことを仕事にできる」が56.3%で、「年収が上がる見込みがある」(49.3%)を上回った。

 転職を検討する理由としては、「会社の戦略や方向性に不安を感じたため」(35.1%)、「よりやりがいのある仕事をしたいと思ったため」(26.7%)と、会社の目的や仕事の意味を問い直す人が増えている。転職者数の推移について調べたマイナビの調査によれば、正社員の転職率は直近6年間の中で昨年が最多となっている現状もある。

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変化に柔軟な対応をする会社が選ばれる時代に