「谷愛凌を照らし、鉄鎖の女性を照らさないのなら、それは偽物の太陽だ」
「谷愛凌と鉄鎖の女性はほぼ同時に注目され、激しい落差を浮き彫りにした。一人は万能で、一人は犬のような生活」
「谷愛凌のような優秀な人間にはなれないけれど、私、娘、孫娘と鉄鎖の女性の差はほんのわずかだ」
いまも残る出産で女児より男児を好む傾向、男性の結婚難、女性の誘拐……。「一人っ子政策」などがもたらした社会の歪(ゆが)みは大きい。
その象徴として、鎖につながれた女性の姿は人びとの記憶に深く刻まれた。女性が誘拐され、売買される対象であることへの強い憤りも広く共有された。
中国共産党は昨年、結党100周年を迎え、みなが衣食住に困らず、まずまずの暮らしができる「小康社会」を実現したと宣言した。だがその足元には、「鉄鎖の女性」によって白日の下にさらされた農村の悲惨な現実が横たわっている。(朝日新聞瀋陽支局長・金順姫)
※AERA 2022年5月23日号