地元当局は1月28日、誘拐や人身売買を否定する調査結果を公表した。発表文には、女性には精神疾患があり、たびたび理由もなく子どもや老人を殴っていたというくだりもあった。
こうした説明は「虐待を正当化するのか」という反発を招き、内容にも疑義が相次いだ。
地元当局はその後、法律違反の疑いで“夫”を調べていると姿勢を一変させた。また、8人の子どもはDNA鑑定によって、女性と“夫”の実子であることが確認されたという。
2月10日には事件に関する4回目の発表があり、監禁の疑いで“夫”を拘束したことが明らかにされた。DNA鑑定の結果、女性は雲南省出身であることが判明し、女性を誘拐して売った容疑で、40代の女と60代の男も拘束された。
だが、世論はこの内容にも納得しなかった。鎖でつながれていた女性と、雲南省出身の女性とされる写真が、別人のものではないかといった指摘が一向にやまなかった。
■何度も売り飛ばされる
ごまかしは許さないと市民らが目を光らせるなか、国営の中国中央テレビは2月17日、江蘇省が事件の調査に乗り出すと報じた。それまで調査にあたってきた県と市が一貫性のない説明を続け、県・市のレベルでは、真相を求める世論を沈静化させられないという判断があった模様だ。
江蘇省が2月23日に発表した調査結果によると、女性は44歳で、人身売買の被害に繰り返し遭っていたことが判明したという。豊県トップの共産党委員会書記の更迭など、17人の処分もあわせて公表された。
彼女はどのような経緯をたどって「鉄鎖の女性」にされてしまったのだろうか。発表では、おおむね次のような事情が明らかになった。
雲南省の出身地とされる場所は豊県と約2千キロ離れている。10代で結婚し、2年ほどで離婚。1998年はじめに江蘇省に連れて行かれ、5千元(現在のレートで約9万7千円)で売られた。女性を妻にしたいと考えた男が買い手だったという。
数カ月して行方不明になり、その後、河南省の食堂にいた女性を経営者夫婦が見つけ、1カ月後に近くの工事現場で仕事をしていた2人に売った。さらに別の人物を介して98年6月、女性は“夫”の父親に売り渡された。