「先生は自分も鎖の輪の一つであり、源氏物語のような古典を残していくのが使命だとおっしゃった。そういう話を物語の中に残したいという気持ちはありました」
原田さんはシナリオライター、プロットライターを経て30代で小説家に。50代を迎え、店じまいも考えようかという矢先に『三千円の使いかた』がヒットして原稿依頼が急増し、5年先まで予定が詰まっている。
執筆は年間3冊のペースだ。家族が出かけた後にカフェで入力専用機「ポメラ」に向かい、スーパーで買い物をして家で昼食。目標の原稿用紙6枚分に達しないときは午後も別のカフェで書く。
本書には「ボンディ」のビーフカレー、「揚子江菜館」の上海式肉焼きそば、「ランチョン」のビールとメンチカツなど、食の魅力もたっぷり描かれている。神保町に飛んでいきたくなるこの小説、好評につき続編の執筆が決まったそうだ。(仲宇佐ゆり)
※週刊朝日 2022年5月27日号