作家・室井佑月氏は、安倍晋三元首相が銃撃された事件について再び語る。
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先週のこのコラムの「この国は変わってしまったのかもしれない」という話のつづきをしたい。
変わってしまった、それも悪い具合にというならば、戻す努力をしなければならないのだと思う。
あたしは自分を含め、多くの人が、軽薄になっているんじゃないかと書いた。もちろん、己の軽薄さは直していきたい。たとえば、よく調べもせず、なにかを信じ込んでしまうということだ。それから、世の空気に流されるということだ。
その上で、あたしたちの代弁者たる政治家や、政治のあり方も変わってほしい。あたしたちの情報源であるメディアのあり方も、忖度ばかりの方向から変わってほしい。
安倍元首相の銃撃事件からの、今回の選挙で、見えたことが沢山あった。
銃撃事件の容疑者である山上の親は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者である。安倍元首相とその宗教に繋がりがあることから、安倍元首相を恨んだという。
この件で、テレビでは政治ジャーナリストが、「(宗教団体と安倍氏を)安易に結びつけると、山上容疑者とおなじ発想になるんです」といっていた。が、それは嘘だし、そのようなことをいって人々の口封じをするのは野蛮だ。もう二度とこのようなことが起こらないよう、徹底的にカルト宗教と政治の関わりは解明されなくてはならない。それが報道の役割だろう。
つい先日の参院選で与党陣営が、「民主主義への冒涜だ!」、そう口々にいっていたじゃないか。その思いは、野党陣営だって一緒だろう。
大切な民主主義の大切な選挙。選挙で選ばれ当選する政治家にとって、票は大事で、それを堅持できる団体を重宝するのは理解できる。しかし、黒い噂が立つカルト宗教にまで手を借りるのはいけないことだと、誰もがわかるだろう。票集めや街頭演説での動員を、そういったところに頼むということがどれほど恐ろしいことであるか。また政治家との付き合いが宗教を広めるための宣伝として使われ、さらなる被害者を生み出してしまう。