天野:流れ作業的になりがちなのはご指摘の通りです。私も病院長の経験があるのでわかりますが、病院経営や運営を考えれば、無駄がないに越したことはありません。また、病気によってはある意味定型的で効率的な対応のほうが、患者さんが早く日常生活に戻れる、というよさもあるでしょう。一方、がんなどの病気は手術をしたから終わりというわけではありませんので、同じ対応にはできないと思います。ですからこの点をいかに患者教育として、チームの課題として持ち続けることが大事だと考えています。
私は「人の生命は地球より重い」という言葉を常に自分の姿勢としています。これは1977年、ダッカでのハイジャック事件で乗客を救う時に使われた福田赳夫首相(当時)の言葉ですが、同じように患者さんの命を救うためには、ときには一人の患者さんにコストをかけて対処しなければならないこともあると思うのです。
>>>後編に続く
(構成・狩生聖子)
※週刊朝日MOOK「手術数でわかる いい病院」創刊20年記念セミナー「医師が本音でトーク“いい治療”は病院選びで決まる!」の第1部を要約