公開中の映画「流浪の月」は、凪良ゆうの同名小説を、李相日監督が映画化した。広瀬すず、松坂桃李出演 (c)2022「流浪の月」製作委員会
公開中の映画「流浪の月」は、凪良ゆうの同名小説を、李相日監督が映画化した。広瀬すず、松坂桃李出演 (c)2022「流浪の月」製作委員会

――デビュー10周年を迎えた。仕事で楽しいと感じる瞬間について聞いた。

広瀬:「いま全部出てた!」って思うような感情が激しいお芝居をやっている時に、特にこのお仕事の楽しさを感じます。感情が枯れてしまうところまでいくお芝居をしている瞬間は楽しさは感じないんですけど、完成した映像を観ると楽しいし、そういうお芝居をしている人を見るのも好きです。すごくすっきりするし、そこにしかない高揚感が気持ちいいんです。

 10代の時はすごく負けず嫌いでいつも心は燃えていて、それが目にも出ていたと思います。でも、そうやって自分を削ることに疲れたのか、今は人と比べるというより、「この世界が好きだな」という自分目線に変わりました。

楽しくいられたら

広瀬:私は運がよくて、まわりに「この人とお仕事がしたい」と思える人がたくさんいます。信用できる人もたくさんいるので、「この人たちについていけば大丈夫」とも感じています。そういうふうに思うことで、「また呼んでもらえるように、自分なりにお芝居を楽しもう」という心境になり、すごく楽になりました。

 前は目標みたいなものもあったんですが、前例がないものになろうとした方が絶対に面白いなって思うようになりました。でもそのために何を頑張ればいいかわからない(笑)。それで欲がわかりやすく出なくなりました。強いこだわりを持つこともすてきだけど、今の私はこだわりを持ってもすぐに捨ててしまう(笑)。柔軟に楽しくいられたら一番いいなと思います。

――一方で、14歳でデビューしてローティーンから役者として活動してきたことで感じる“壁”もあるという。

広瀬:私は14歳でこの仕事を始め、運よくすぐにお仕事をたくさんいただけるようになったので、学校に行く日よりもお仕事に行く日の方が圧倒的に多かったんです。普通に学校に通って就職するという経験を全くしていないので、そういう役を演じる時は想像でしか演じられない。恋愛にしても、「流浪の月」の更紗のように同棲経験があるわけでもない。李監督とも、「もっと人生経験を豊富にしていかないと、今後はより壁を感じるのではないか」という話をしました。華やかで非現実的な生活を送っているような役より、普通の役を演じることが多いので、余計に危機感を覚えます。

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