治療は薬物療法と手術になる。
薬物療法は、前立腺の平滑筋の緊張を緩めるα1ブロッカーやPDE5阻害薬、前立腺細胞の増殖を抑える5α還元酵素阻害薬などを用いる。過活動膀胱症状が強い場合にはβ3作動薬や抗コリン薬を併用する。
薬物療法で効果がみられない場合には、前立腺の摘除手術を考慮する。
■全身疾患が原因で夜間頻尿になる場合も
頻尿のなかでも、夜間頻尿を訴える人は多く、質のよい睡眠を持続することができないため、悩みは深刻だ。高齢になると一般的に眠りは浅くなり、目を覚ますたびにトイレに行くという人もめずらしくない。
多くは過活動膀胱や前立腺肥大症の治療、水分摂取量の見直しなどでトイレの回数を減らすことができるが、注意が必要なのは、全身疾患が原因となっているケースだ。
睡眠障害の一つである睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、眠りが浅くなるだけでなく、夜間の尿量を増やす(夜間多尿)ことがわかっている。就寝中に呼吸が一時的に止まるなどの症状がないか確認することが必要だ。
また、心不全や慢性腎臓病(CKD)、高血圧、糖尿病なども夜間多尿の原因となりうる。原因疾患が存在する場合は、その治療が不可欠だ。
なお、男性の難治性の夜間頻尿(夜間多尿)で、心不全や腎不全がないなどの条件を満たすケースでは、デスモプレシンという抗利尿薬が用いられることもある。日本大学板橋病院病院長の高橋悟医師はこう話す。
「かつては、夜間頻尿は最も頻度が高く、悩みが深く、最も治りにくいとされてきました。いまは男性に限ってですが、難治性のものも改善が可能になりました」
原因となっている疾患を治療することで、トイレに行く回数を減らすことは可能だ。特に夜間頻尿では、全身性の疾患が隠れているリスクが高い。あまりがまんせず、受診することが肝要だ。
(文・別所 文)
※週刊朝日2022年5月27日号より