多くは原因が特定できない「特発性」で、第一の誘因は、加齢によって膀胱容量が小さくなること、膀胱と尿道括約筋の連携機能の低下、骨盤底の脆弱化などが考えられている。
骨盤底とは、膀胱や直腸、女性の場合は子宮など、骨盤内にある臓器を下から支えている筋肉・筋膜・靱帯などの総称だ。中高年になると骨盤底が緩み、支えていた臓器が下に下がって、尿道括約筋の締める力が低下してしまう。そのため、過活動膀胱の症状があらわれる。また、過活動状態になった膀胱は、尿が十分たまりきっていないのに尿意を感じ、頻尿になる。
治療は薬物療法と、行動療法が中心になる。
薬物療法は、膀胱容量を増大させるβ3作動薬と、異常な膀胱収縮を抑制する抗コリン薬を服用する。山田泌尿器科クリニック院長の山田拓己医師は次のように話す。
「抗コリン薬は副作用として口渇があるため、水を余分に飲んでしまって、それが夜間頻尿につながることもあります。そのため、効き目が穏やかで副作用の少ないβ3作動薬から始めて、効果がみられない場合に抗コリン薬を用います」
行動療法としては、トイレに行くまでの時間を少しずつ延ばしていく「膀胱訓練」があげられる。過活動膀胱では尿意を覚えても、実際には膀胱がいっぱいになっていることは少ないので、尿意を感じてから5分、10分とがまんして、排尿間隔を徐々にあけていく。
緩んでしまった骨盤底を鍛え直す「骨盤底筋訓練」も推奨されている。
【前立腺肥大症】
前立腺は男性特有の臓器で、膀胱の出口付近にある。クルミくらいの大きさで、多くは50代ごろから肥大が顕著になる。尿道を浮輪のように取り囲んでいるため、肥大すると尿道や膀胱の出口を締め付ける。そのため、▼尿に勢いがない、力まないと出ないなどの排尿症状▼頻尿や過活動膀胱症状である蓄尿症状▼残尿感などの排尿後症状、などのような症状が起きてくる。