■“男らしさ”に疑問を持ち出す

 1995年、日本で初めての男性相談員による男性専用の電話相談窓口「『男』悩みのホットライン」が開設された。その後、各地の自治体などで男性専用電話相談が開設された。「『男』悩みのホットライン」は月3回、第1・第2・第3月曜日に開設されているが、ここでも相談の電話は常にかかりっぱなしになる。

 同ホットラインを運営する一般社団法人日本男性相談フォーラムの福島充人代表理事は、男性専門の電話相談窓口は、ようやく浸透しつつある段階だという。

「これまでは、男性側に『男たるもの、こうあるべき』という意識がありました。それは、男は身内やパートナーをリードする立場で、自分のことは自分で解決すべしという意識で、誰かに相談することに抵抗感があったのだと思います。しかし、今は共働きもイクメンも当たり前ですから、男=一家の大黒柱でもない。これまではケアをする役割は女性の仕事だとされていましたが、最近は男性も優しさや愛情表現を求められるようになっています。かつては男らしさに疑問を持つことがなかった男性たちが、今は昔ながらの男らしさに疑問を持ち始めたのではないかと考えています」

出典:日本男性相談フォーラム2022年4月統計

 相談内容についても変化がみられる。「『男』悩みのホットライン」への相談内容は、設立当初から2015年ごろまで「性の悩み」が圧倒的に多かった(折れ線グラフ)。性の悩みには、例えば性器の大きさや形、フェチのような自分の性的指向などがある。

 こうした性の悩みは次第に比率を下げてきて、代わりに増えているのが「自分の性格や生き方」についての相談で、3分の1を超えている。そして緊急事態宣言で増えているのが「その他」の項目だ。

出典:日本男性相談フォーラム2022年4月統計

「私たち相談員は相談を聞いた後でその悩みの種類を分類するのですが、『その他』というのは相談を受けた後でも分類しにくい相談です。彼らはもしかしたら『とにかく話を聞いてほしかった』という人なのではないかと考えています。コロナ禍で家にこもり続け、誰かとつながりたいと思う人が電話をかけてきた可能性は高いと思っています」(福島代表理事)

 このほか、DVやハラスメント、LGBTといったような相談は、近年それ専門の相談窓口が誕生したため、それほど多くはないという。

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