逗子市観光協会が発行する「小坪漁港の本」。アンドサタデーが企画・編集を手がけた(写真:各社提供)
逗子市観光協会が発行する「小坪漁港の本」。アンドサタデーが企画・編集を手がけた(写真:各社提供)

■県外にもファン広げる

 自分たちが語り継ぎたいと感じる文化を、とことん掘り下げる。それが「めぐる、」の作り方だ。タウン誌時代は1日に何件も取材に駆け回っていたが、今では一つの取材に数日かけることもある。理念に共感してくれる広告主も増えた。

「以前は(広告)掲載後にお客さんが来てくれなかったとか、効果測定について言われることが多かったんです。今は、効果や数字じゃないところで出稿してくれている広告主が多くて、応援してもらっていることを感じます」(小山さん)

「めぐる、」は県外にも読者を広げ、ネット通販でまとめ買いする人も多いという。

「県外に向けて徳島をPRするものはいろいろありますが、しっくりきていなかったんです。『知ってる場所やし、知ってるものやけど、それがほんまに徳島の魅力かな?』と感じていて。住んでいる自分が本当は何がいいと思っているのか、改めて探りながら内容を決めていきました」(徳原さん)

 官民連携で生まれたローカルメディアの例もある。

 SNSを中心としてスタートした「盛岡という星で」は、盛岡市が18年から取り組むプロジェクトだ。市の都市戦略室とデザイン会社ホームシックデザインが中心となり、旅行会社や地元企業も巻き込みながら活動している。

■出身者に寄り添いたい

 軒下の雪かき用スコップ、出身者には分かる店、あの建物──、発信の中心となるインスタグラムには、何げない街の一コマを切り取った写真とショートエッセーが並ぶ。「懐かしい!」「泣いちゃう」など、盛岡を知る人からコメントが書き込まれる。

 プロジェクトの発端は、若年層の人口流出という課題に取り組むためだった。ただUターンや移住をしてもらうにも、そんなに簡単には振り向いてもらえない。でもスマホに流れる1コマを通じて、東京に出ていった盛岡出身者たちに寄り添いたいという思いが伝わって、その人たちとよい関係性を保つことができたら、きっと将来盛岡の力になってくれる。通称「盛星」にはそんな願いが込められている。

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