石村社長をインタビューした会議室に置いてあった招き猫たち(撮影/写真部・加藤夏子)
石村社長をインタビューした会議室に置いてあった招き猫たち(撮影/写真部・加藤夏子)

「GMOインターネットグループ金融部門の立ち上げメンバーの高島秀行さん(現GMOフィナンシャルホールディングス会長)とごはんを食べていたら『英国でリテール(個人向け事業)をはじめるにあたり、人材を探している』と。

『僕にやらせてください』と手を挙げ、英国の『GMO CLICK UK LIMITED(現GMO-Z.com Trade UK Limited)』のCEO(最高経営責任者)になりました。また会社を辞めると聞いて、妻は驚きを通り越し、あきれていました」

 GMOフィナンシャルホールディングスの金融サービスはどう進化していくのか。現在、取り扱っている金融サービスは株式やFX、CFD(差金決済取引)、暗号資産など幅広い。低コストで使いやすいだけでなく、デジタルデータ「NFT」などの新分野もいち早く取り入れる。

「ネット証券の登場から約20年が経って、金融商品の幅も広がりました。どの金融商品を売買するにしても、コストは気になりますよね。どこよりも安く便利なものを提供していきたい」

 財布とその中身を見せてくれるようお願いしたら、石村さんはカード入れを机の上に置いた。そこには運転免許証やクレジットカードなどが数枚。次に「財布はこっちです」と言いながらスマホを取り出した。現金は1円も持たない完全キャッシュレス生活だ。

「現金が必要な店には行きません。私たちは金融の会社なので、キャッシュレスの不便なところやいいところを見ていくと、ビジネスに役立つのではないかと思って」

 日々の生活も実証実験ということか。カード入れの中には、チェーン店の「餃子(ぎょうざ)の王将」の会員カードもあった。庶民派の「演出」ではなく、会社近くの店舗にしょっちゅう足を運ぶという。

 ところで今日の昼食は? 腰に付けた黒いポーチからゆかり(赤しそ)のおにぎりを1個取り出した。炊飯器の米を自分で握って、ラップに包んできたそうだ。

「前日のおかずが余っていたら、ジップロックに入れて持ってきます。柿の種は、小腹がすいたら手を汚さずにすぐ食べられていい。プロテインバーは、おやつ」

 昼食に時間をかけるより、仕事に全エネルギーを投入したいのだとお見受けした。

◎石村富隆(いしむら・とみたか)/GMOフィナンシャルホールディングス代表執行役社長。1973年、奈良県出身。大学卒業後、1997年4月に東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行。2003年8月、ライブドア(現NHN テコラス)に転職。2007年2月、当時ライブドア傘下のかざかフィナンシャルグループに転籍。2010年10月、My外貨(現OANDA証券)代表取締役。2013年4月、GMOCLICK UK LIMITED(現GMO-Z.com Trade UK Limited)取締役CEO。2017年12月、GMOコイン取締役社長。2018年1月、GMOコイン代表取締役社長(現任)。2018年5月GMO-Z.COM COIN CANADA,INC. 取締役(現任)。2022年1月、GMOフィナンシャルホールディングス代表執行役社長COO。2022年3月、GMOフィナンシャルホールディングス取締役兼代表執行役社長COO、GMOインターネットグループ執行役員(現任)

(文/大場宏明、編集/中島晶子)

※『AERA Money 2022夏号』から抜粋

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