一遍上人のように全国を回りたいとも話し、東日本大震災ではいち早く現地に出かけた。自分の足で立ち、何でも目で見ることが作家としての矜持だと中村さんに告白したこともある。
常に近くで見ていた瀬尾さんはこう話した。
「瀬戸内は最後まで書くことを諦めていませんでした。ニコニコしているおばあちゃんというだけでなく、作家なのです。そんな瀬戸内と私は10年一緒にいました。結婚して子どもができても一番の存在で、四六時中考えてきました。自分の人生を変えてくれた人です。瀬戸内のことがちょっとでも気になったらこの映画を見てほしいですね」
改めて中村さんに瀬戸内さんとの関係について聞いた。
「失礼かもしれませんが、親友という感じですかね。最も大切な人、一番大切な存在、ある種の恋愛とも言えますね。僕のことを一番心配してくれた人でもあります。もっと先生のお話をしたいです。先生の話をしていると終わらないですね……」
(本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2022年6月10日号