「普通に考えれば、林さんが理事長をやるメリットはありません。すでに地位もあり、失敗すれば汚点になる。経済的なメリットも大きくない。理事長の職に専念するほどの覚悟でいないと、十分な対策はできないと思います。誰かに任せて自分がトップに立ってさえいればいい、というものではありません。それでもやるというのは覚悟があるのだと思います。社会的な使命感を感じているのでしょう。女性がこうした地位に就くときは、そういった動機が多いものです。ぜひ頑張ってもらいたいです」
さらに、今後重要なのは改革に向けた体制づくりと田中さんは見る。
日大は16学部87学科のほか、短期大学部、通信教育部、大学院19研究科を持つマンモス大学だ。さらには、付属高校、中等教育学校、付属中学校、小学校、幼稚園なども有する日本最大の教育機関である。
大学の収支計算書を見ると、21年度の収入合計は2153億円にも上る。学生生徒等納付金収入だけでも1119億円だ。予算も巨額で、並みの上場企業や自治体よりも大きい。
「日大ほどの規模だと目配りが大事になってくる。目の届かないところには不正の芽が出てくることがある。どこでどのような問題が起こっているのか、自ら耳に入れる必要があるし、そうしたことを耳に入れてくれる体制をつくる必要があると思います」(田中さん)
日大のこれまでの不祥事の背景には、前理事長による“独裁体制”があったとされる。だれかが不正や問題を指摘して、改善するという仕組みにはなっていなかった。
先の初見教授も、林さんのサポート体制についてこう語る。
「今まで中枢にはいなかった有能な補佐が絶対に必要だと思います。これまでの守旧派は現場の教職員の話を聞いてこなかった。本来は現場にいる教職員が何をするべきか一番わかっているが、それを知らない本部の人たちがおかしなことを決めてきた。現場の声を聞かないと今後日本大学が生き残っていくのは難しい」