東尾修
東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、高卒1、2年目にして1軍で活躍する選手たちに注目する。

【写真】1軍登録されて活躍する18歳の西武・滝沢夏央

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 今まで何度となく、チームマネジメントの変化について話してきた。今の野球は私が現役時代の「9人野球」は存在せず、支配下全員の戦いであると指摘してきた。今年もその思いを強くしている。

 西武の滝沢夏央は5月13日に支配下選手契約を結ぶとすぐに1軍登録され、その夜の楽天戦に2番・遊撃でスタメン出場。プロ初安打を放つと、翌14日はプロ初打点となる適時三塁打に好走塁まで見せ、2日連続のお立ち台に立った。現役最小兵の164センチ。しかも、高卒の18歳で育成ドラフト2位というから恐れ入る。今季、イースタン・リーグでも打率2割3分4厘で、2軍でとんでもない成績を残したわけでもない。それでも、堂々とプレーしている。1、2軍の監督とコーチ間で、「1軍で通用するための心技体」というものを確認し、起用したファインプレーともいえる。

 巨人坂本勇人主将の穴を高卒2年目の中山礼都が埋めている。かつて高卒選手と言えば、スラッガータイプの選手はすぐに1軍で使われたが、体ができていないことを理由にファームでじっくり育てるというパターンも多かった。だが、滝沢にしろ、中山にしろ、プロのスピードに遅れている感じは見受けられない。年間を通した体力という点で、必ず壁には当たるだろうが、今は堂々たるプレーを続けている。

 各球団ともに支配下上限の70人近く登録するのではなく、65人前後にしてキャンプで競わせ、支配下契約を行うということが主流となった。しかも高卒、大卒関係なしに、1軍で使えるかどうかで抜擢(ばってき)している。選手からすれば、それだけ可能性が広がっているということだ。

 1軍の試合の中での収穫や課題の発見は若い選手にとって、2軍戦より何倍も価値がある。私も現役時代に、黒い霧事件などもあって、先発投手がいないものだから、1軍で負けても負けても起用し続けてくれた。その負けの中で通用するものと通用しないところ、ならばどうすべきか……と考えたことが、通算251勝につながった。

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