「実戦の最中に利潤を上げていくのは軍需産業の性であり、前例も多い」
と杉原さんは指摘したうえで、こう話す。
「イスラエルがパレスチナのガザ地区を攻撃した直後、クローズドではありますが武器見本市を開いたことがありました。その場で攻撃シーンの映像を流してプロモーションする。武器をセールスするとき、一番の価値は『実戦で効果を上げています』ということ。軍需産業は『この戦争をやめさせるべきか』などという倫理的な基準とは無縁です。そういった『殺人に寄生していく』あり方自体が、過去の戦争でも長期化に直結してきた。ウクライナも例外ではないと思います」
今回の侵攻では、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランドが自国の旧ソ連製戦車をウクライナに提供し、代わりに米国から最新兵器の提供を受けるという例もあるという。杉原さんはこう語る。
「NATOが当事者として軍事介入せず、武器支援に留めるという『線引き』をしていることで起きているケースでしょう。ある意味『在庫一掃』的なやり方で、軍需産業にとって非常にオイシイ商売だと思いますが、そんな形が露骨に表れている点でかなり異例な戦争だと感じます」
ウクライナへの武器提供で突出しているのは米国だ。5月19日には軍事支援約200億ドルを含む総額約400億ドル(約5兆円)のウクライナ支援追加予算が上院で可決した。この金額には杉原さんも驚きを隠せない。
「第2次世界大戦後、例がないと言われるほどの巨大な『武器パッケージ』。その点でも特筆すべき戦争です」
(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2022年6月6日号より抜粋