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 キックボクシング界のカリスマである那須川天心と武尊が対戦する注目の格闘技イベント「THE MATCH 2022」のテレビ中継が見送られることが、5月31日に突然フジテレビから発表された。

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 6月19日に開催されるこのイベントが生中継されることは事前に発表されていたのだが、開始まで3週間を切った段階で急きょ放送されないことが決まった。格闘技ファンの間では失望の声が広がっている。

 同イベントの製作実行委員会にとっても放送中止は寝耳に水だったようだ。その判断が下された直接の理由は明らかにされていないが、主催者に関するネガティブな週刊誌報道があったことが原因の1つではないかと言われている。

 実行委員長の榊原信行氏は記者会見の中で「放送局が求めるコンプライアンスと一般常識的なコンプライアンスというのは若干温度差があるのかなという気はしないでもない」という趣旨のことを語っていた。フジテレビが自社の基準でコンプライアンスを徹底した結果、最終的な判断が下されたのだろう。

 地上波テレビについて論じる上で「コンプライアンス」という単語は欠かせないものになってきた。今ではどの局もそのことに敏感になっていて、バラエティ番組などの制作スタッフも全体的に及び腰になっている。たとえるなら、一昔前は白か黒かはっきりしないグレーゾーンにもひとまず足を踏み入れていたのに対して、現在では「グレーならやめておこう」と判断されるようになりつつある。

 しかし、すべての制作者がそう思っているわけではないし、「昔は何でもできたけど今は何もできない」というのが正しいわけでもない。

 90年代に過激な企画の数々で一時代を築いた『進め!電波少年』のプロデューサーを務めた日本テレビの土屋敏男氏は「『当時のテレビは無茶が許されていて良かった』などと言われることもあるが、別にあのときからダメだったよ」などと振り返っている。この証言は重要だ。

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