
■満若勇咲監督は大阪芸大在学中に食肉センターを舞台にしたドキュメンタリー「にくのひと」を完成させたが、被差別部落の地名が登場するなどの理由で部落解放同盟から公開中止を求められ、出演者との信頼関係が維持できず、劇場公開を断念せざるをえなかった経験をもつ。以来十数年。プロデューサーに「なぜ君は総理大臣になれないのか」の大島新氏を迎え、差別の現況と差別根絶の妨げになってきたものは何かを考える。
<注>「全国部落調査」復刻版事件
被差別部落の地名などをまとめた本の出版やネット公開はプライバシー侵害だとして、部落解放同盟と被差別部落出身者約230人が出版社(示現舎=宮部龍彦代表)側を相手取って2016年に東京地裁に提訴。昨年9月の判決で地名リストの大半について「公開は公益目的でないことが明白だ」と違法性を認め、リストを掲載した部分の出版禁止やネットからの削除などを命じた。原告、被告双方が控訴。映画の中で宮部氏は「問題は使い方。(差別用途で)使う企業が悪い」「部落問題は貧困問題」などと語っている。
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※週刊朝日 2022年6月10日号