それまでの就労先での業務が困難になることもあるだろう。
「自分はまだ働ける、そんな思いをもって何回も履歴書を書いてはハローワークに行くが、面接で落ちる。これを何十回も繰り返される方もいらっしゃいます」(駒井さん)
相談先としては、役所の認知症相談窓口や福祉課、地域包括支援センター、若年性認知症総合支援センターなど。認知症に詳しい医療機関は「認知症疾患医療センター」や「日本認知症学会」認定専門医を探すのがお勧めだ。就労、医療・福祉などの専門機関と連携する「若年性認知症支援コーディネーター」が相談を受けてくれる。
さて、その後、記者が受けたMRI検査の結果についてだが。
ドキドキしながら病院に向かい、医師と向き合って座った。
「海馬の萎縮はない。構造的な問題はない。おそらく機能的な問題でしょう。ストレスが影響していたのではないでしょうか」
まずはホッとした。次に、具体的な数値について説明を受けた。脳の内側側頭部(海馬など)の萎縮を客観的に評価するVSRAD値が0.19(*)とあった。
「これは極めて良い数値で、問題ありません」
とのこと。しかし、ストレスがかかると、脳の機能は低下してしまうものなのか。
国立長寿医療研究センター「もの忘れセンター」センター長の武田章敬さんに聞いた。
「ストレスがかかると、注意力や集中力が一時的に低下して、認知症に近い症状が出ることはあります。もし後日、(ストレスが軽減したころに)もう一度ADASを受けて結果が良ければ、過度なストレスで脳の働きが一時的に悪くなっていた可能性があります」
とはいえ、手放しで安心できるかというと、そうでもなさそうだ。
「MRIの結果だけでなく、症状や経過、生活の状況、認知機能検査も含めて総合的に判断する必要があります。早期の場合は、脳の異常がMRI画像に表れない人もいるので、気になる人は脳血流シンチグラフィー検査(SPECT)も受けて、脳の血の巡りを見るのが良いでしょう。費用は医療保険負担が3割の方で2万~3万円ほどです」