ここまでは朝日新聞や日経新聞を参考に記した。
私は1970年代のオイルショックも経験したが、当時は一般の人間には詳しい情報がつかめず、混乱も起きた。今はSNSなどで多くの情報に触れられるが、その分、何が正しいのかの見極めが難しい。冷静に注視することが大事だと感じている。
ウクライナ戦争が続くことで心配なのは物価上昇だけではない。
世界の専門家たちはウクライナ戦争が秋以後も続けば、多くの途上国が間違いなく飢餓に襲われることになる、と捉えている。
とすれば、何よりも重要なことは、早く戦争を終わらせることだ。
それができるのはプーチン大統領とゼレンスキー大統領の二人しかいないと言い切る専門家が少なくない。しかし私は、プーチン氏もゼレンスキー氏も停戦に持ち込むことはできないと見ている。両者を停戦させるような状況に誘導できるのは、バイデン米大統領だ。
だが、バイデン氏の最近の言動は、停戦への誘導ではなく、まるで米国のためにゼレンスキー氏をロシアと戦わせているようにさえ受け取れる。当初のウクライナ戦争に対する慎重な発言が米国民に嫌われ、だから支持率が低い、という自信のなさがあるかもしれないが、モスクワに飛び、プーチン氏と対面での交渉をすべきである。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年6月17日号