日本を含む西側の報道でよく目にする「プーチン政権が転覆する兆し」や「民衆の不穏な空気」などは、モスクワで感じることはないという。
■ロシア崩壊へのスイッチ
一方、今回の侵攻で「プーチン体制のロシアは、自然に崩壊していくスイッチがはっきりと入ってしまった」と、日向寺さんは感じている。
「これから少しずつ、1万人以上の自国民がウクライナで亡くなったことがわかってくるでしょう。誰々さんの息子が死んだらしいといったように。それも十分な情報が与えられず、演習だと思ってウクライナに行ったら、撃たれて死んでしまった、と。そういうニュースを国営メディアが扱うようになると、政権は揺らいでいくと思いますね」
日向寺さんは、1979年末にブレジネフ政権がアフガニスタン侵攻を開始し、その約10年後に旧ソ連は崩壊してしまったことを思い浮かべる。
「市民が事実上のサボタージュをして、体制が壊れていく様子を間近で見てきました。そして新しい政権が生まれた。ロシアは帝政時代から崩壊と再生を繰り返してきました。同じ過ちと目覚めを繰り返してきたともいえますが、それがこの国の持つ遺伝子なのでしょう」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)