海上自衛隊の護衛艦「いずも」は事実上の空母化が決まっている
海上自衛隊の護衛艦「いずも」は事実上の空母化が決まっている

■現在1万人以上の欠員

 自衛隊の規模を抜本的に拡大するのはほぼ不可能だ。

 自衛隊は隊員の募集に苦労し、今でも大きな定員割れになっている。防衛省設置法では人員24万7154人だが、21年3月末の現員は23万2509人で、1万4645人の欠員となっている。

 このため18年からは一般の隊員の採用を「18歳以上33歳未満」に広げた。32歳の新兵が2等陸士で入隊すると、前年18歳で入隊した隊員は1等陸士に昇任しているから、13歳も年下の先輩の指導を受けることになる。感情的に難しいことも起きそうだが、自衛隊はとにかく員数合わせに必死にならざるを得ない。

 特に海上自衛隊は法的定員4万5329人に対し、現員は4万3419人で1910人の定員割れだ。艦艇の乗組員は持ち場が決まっているから、乗員が不足のまま出港するのは危険を伴うこともある。

 このため従来の2千トン級の護衛艦の定員は120人だったが、その後継の3900トンの護衛艦は定員を90人にする省人化で設計された。

 また、女性の応募者を増やすため女性士官の登用を進め、最精鋭の第1護衛隊群(横須賀・ヘリ空母1隻、護衛艦3隻)の司令に女性一佐(大佐)が任じられたこともあった。

 今後も人員はさほど増やせないから、現在の防衛予算の42%を占める人件費・糧食費は急増しそうにない。増額される防衛予算約5兆円の大部分は装備費、研究開発費に回りそうだ。これは4千億円の原子力潜水艦を毎年12隻建造できるほどの額となる。(軍事ジャーナリスト・田岡俊次)

AERA 2022年6月13日号より抜粋