大隈記念講堂 1123席(うち車いす席2席)の大講堂(小講堂は300席)。天井中央の窓に、太陽、月、星のモチーフを配して宇宙をイメージしている。マイクなしでもすみずみにまで音声が届く設計(写真/写真映像部・高野楓菜)
大隈記念講堂 1123席(うち車いす席2席)の大講堂(小講堂は300席)。天井中央の窓に、太陽、月、星のモチーフを配して宇宙をイメージしている。マイクなしでもすみずみにまで音声が届く設計(写真/写真映像部・高野楓菜)
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 キャンパス内に、国指定の重要文化財を所有する名門大学がある。なかなか見る機会のない歴史的建造物を訪ねるシリーズ。第4弾は「早稲田大学」です。

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大隈庭園(旧大隈重信邸庭園)に隣接する側に設置された歩廊は、庭園との景観バランスを考慮し、壮麗なロマネスク様式となっている。壁の凹部分に大礼服姿の大隈重信像が立つ(写真/写真映像部・高野楓菜)
大隈庭園(旧大隈重信邸庭園)に隣接する側に設置された歩廊は、庭園との景観バランスを考慮し、壮麗なロマネスク様式となっている。壁の凹部分に大礼服姿の大隈重信像が立つ(写真/写真映像部・高野楓菜)
時計塔内部。4方向に時刻を示す時計は2mを超す大きさ。かつては大型の機械だったが、今は小型クオーツ。なお1日6回、8時、9時、12時、16時、20時、21時に鐘の音が響く(写真/写真映像部・高野楓菜)
時計塔内部。4方向に時刻を示す時計は2mを超す大きさ。かつては大型の機械だったが、今は小型クオーツ。なお1日6回、8時、9時、12時、16時、20時、21時に鐘の音が響く(写真/写真映像部・高野楓菜)

 早稲田大学の象徴・大隈記念講堂が竣工したのは、昭和2(1927)年。地上1階から3階までを占める大講堂、地下1階の小講堂に加え、時計塔を備える。塔の高さは125尺(約38m)。これは創立者・大隈重信が唱えていた「人生125歳説」にちなむ。

(写真/写真映像部・高野楓菜)
(写真/写真映像部・高野楓菜)

 三つのアーチ状の入り口など基本的にゴシック様式の建築だが、一部ロマネスク様式を取り入れた部分もある。

 レンガ造りのように見えるが、鉄骨鉄筋コンクリート。外壁に信楽で製作されたスクラッチタイル(62×230mm)を約19万枚も貼り付けている。2007年に大がかりな改修工事が行われた際は、タイルを当時のものにいかに近づけるか苦心したという。

 講堂内部も建築学的に貴重なものだ。1階席と2・3階席との間に柱がない構造は、当時としては画期的。218tの客席を一本の支柱も使わずに梁で支えている。舞台は演劇活動にも使えるようにアーチ状に囲まれ、観客が集中しやすいようになっている。

ビル・クリントン氏、胡錦濤氏など海外首脳の講演会会場としても、しばしば使われてきた。ここは、講演者が控える貴賓室。舞台袖とつながっている。赤系の絨毯が重厚感を印象づける(写真/写真映像部・高野楓菜)
ビル・クリントン氏、胡錦濤氏など海外首脳の講演会会場としても、しばしば使われてきた。ここは、講演者が控える貴賓室。舞台袖とつながっている。赤系の絨毯が重厚感を印象づける(写真/写真映像部・高野楓菜)

 キャンパスツアー(要予約)に組み込まれており、使用状況によっては大講堂内も見学可能。(取材・文/本誌・菊地武顕)

週刊朝日  2022年6月17日号

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