新聞各紙に掲載された千葉工業大学の80周年記念広告
新聞各紙に掲載された千葉工業大学の80周年記念広告

 併願者も多いため、大学関係者からは「志願者を多く見せている」といった批判を受けることもある。しかし「志願者数を増やしたくて始めたわけではありません。根底にあるのは、経済的負担の軽減など受験生の助けになることをするという『受験生ファースト』の発想です」と日下部さんは言う。

 入試制度の変革と並行して力を注いでいるのが、学外への情報発信だ。「ツタンカーメンの鉄剣の製造方法と起源の特定に成功」「世界初!宇宙を汚さないクリーンなロケット推進薬の開発に成功」など、ユニークな研究成果が出たときは、積極的にプレスリリースを出してきた。

 80周年記念広告は、同大学からの依頼を受け、コピーライターの渡辺潤平さんが文面やデザインを考えた。制作にあたり、理事長からは「ただ広告を打つだけでは意味がない」「『世界文化に技術で貢献する』という建学の精神を踏まえ、波風が立つようなメッセージを打ち出してほしい」というリクエストがあったという。渡辺さんは言う。

「大学の仕事というのは、教員、卒業生、スポンサーなどステークホルダー(利害関係者)が多く、広報担当者の方も全方位に気を遣われていることが少なくありません。それが千葉工大さんの場合『攻め』の精神を明確に持たれている。こちらも、その斜め上を行く広告を作りたいという気構えで挑んでいます」

 今回の広告で科学者への問題提起というスタイルを取った理由については、こう話す。

 「新聞の誌面には、ロシアのウクライナ侵攻をはじめ、戦争の動向を伝える記事が日々掲載されています。そんな中で、単に技術の力を称賛しても独りよがりになりかねない。世情をどう受け止めているのか、大学として表明するのには今がちょうどいいタイミングなのではないかと思いました」

 字体は『鉄腕アトム』など科学技術をテーマとした作品を手がけた漫画家・手塚治虫さんの作品を意識。デザインは「粗削りでドキッと来るようなものを」と、黒の背景色に赤い文字の組み合わせを選択した。候補案は他にもあったが「デザイン、メッセージ共に一番刺さる内容だった」と日下部さんは話す。

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「有名大学」ではないゆえの戦略