世界的にもBA.5への置き換わりが進む。世界保健機関(WHO)が7月20日に公表した疫学週報によると、世界100カ国からBA.5が検出されており、6月27日~7月3日の週から同4~10日の週にかけ、国際的なデータベースに登録されたオミクロン株のうち、BA.5が占める比率は51.84%から53.59%に増えた。
WHOは、BA.5の増加が「各地の感染者や入院、集中治療室での治療の数を押し上げている」と指摘した。ただし、WHOは同時に、これまでのところBA.5がBA.2など他のオミクロン株の系統より重症化しやすいという証拠はないとしている。オミクロン株のBA.2やBA.1は、デルタ株に比べると重症化率は低い。
接種から時間が経過
ワクチンのBA.5に対する効果が実世界でどの程度なのかはまだデータが十分にそろっていないものの、英国健康安全保障庁によると、予備的なデータでは、重症化を防ぐ効果は、BA.2に対する効果と大きな差はないという。
伝播性が高いだけでなく、国内では最後のワクチン接種から時間が経ち、効果の減衰してきている人も増えているため、短期間にこれまでにない規模で感染者が急増している。もともと重症化しにくい人でも、一定の頻度で重症化する。このため、感染者の実数が増えれば、リスクの低い人の間からも重症化したり死亡したりする人が増える恐れがある。
加えて、短期間に感染者が集中すると、医療機関がパンクする恐れがある。すでに発熱外来や、救急外来などでは、発熱などで新型コロナウイルスへの感染の可能性のある患者が急増し、対応が難しくなってきている地域がある。
背景には、受診者の急増だけでなく、スタッフの欠勤の増加もある。医療機関の職員本人が感染したり、あるいは家族が感染して濃厚接触者になったりして、出勤できなくなる人が増えているのだ。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
※AERA 2022年8月1日号より抜粋