イーロン・マスク氏が「日本は、いずれ消滅する」と警告した。ここ数年、ギアを上げて進む少子化の背景には何があるのか。AERA 2022年6月20日号の記事から紹介する。
【写真】2014年、AERAの表紙に登場したイーロン・マスク
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「日本は、いずれ消滅する」
5月、そんな衝撃的なツイートがSNSを駆け巡った。発信者は、米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)。同氏が米ツイッター社の買収に約440億ドルで合意したとの報道が出た直後だったために、
「次は日本が買収されるの?」
と思った人もいたというが、ジョークでも笑い話でもない。現実になりつつある未来なのだ。
総務省が4月に発表した、昨年の日本の総人口は、前年より64万4千人減の1億2550万2千人(外国人272万人を含む)。減少数、減少率ともに1950年以降で最大となった。
冒頭のマスク氏のツイートは、その報道を引用する形で投稿されたもので、全文はこうだ。
「明らかなことを言うようだが、出生率が死亡率を超えるために何かを変えない限り、日本はいずれ消滅する」
そんなこと言われても──。
都内の広告会社で働く女性(33)は、そのツイートをスマホで見たが、すぐに画面をスクロールさせた。
「責められている気がして怖くなった。早く産みたいですよ。でも結婚相手もいないし、どうしたらいいんですかね」
■既婚者の子の数が急減
女性は最近、卵子凍結サービスの説明会に足を運んだ。出産するとしても遅くなるかもしれない。その時に備えようと考えたからだ。だが、映像で見た冷凍設備が想像していたよりも簡易なものに見えて、急に不安になって踏み出せなかったという。
最近、社内の同僚が未婚のまま出産した。女性は言う。
「様々な選択肢のある時代だし、シンプルにうらやましいと思った。だけど私は、独身のまま出産する勇気が出ません」
厚生労働省の人口動態統計によると、2021年に生まれた日本人の子どもの数(出生数)は81万1604人で、前年より2万9231人(3.5%)少なく、データがある1899年以降で最少となった。15年までは年約1%の緩やかな減少だったが、16年に100万人を割りこんで以降は減少率が毎年3.5%程度になり、わずか5年で約80万人に。少子化が一段階ギアを上げて加速している。