さっき、具志堅がすぐ横で掘り出した歯は9歳くらいのものだった。歯を失っても生きられるが、頭蓋骨を失って生きることはできない。その骨は、私の子と同じ年ごろの子どもが、この壕で命を落とした事実を告げていた。

「いつの時代でも守られるべき存在の子どもが、なぜ犠牲にならなければいけなかったのか。考えると、手が止まる」。具志堅は深いため息をつく。

 なるべく多くの人に収容を手伝ってもらっている。昔ここで戦争があったそうだ、ではなくて、戦争があった事実を自分で確かめ、自らの言葉で語ってもらうために。次の戦争を止める責任を担ってもらうために。

 たとえ収容が完全に終わらなくてもいい。新たな遺骨を積み重ねないことが、戦没者の真の慰霊になるのではないか。

 夢中で掘る。さらに出てくる。板状が確認できる頭蓋骨のかけらだけで4枚になった。

 乾ききった骨はとても軽かった。軽さに動揺を覚えた。どうしていいか分からずに、ただ指でなで続けた。

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