その「違い」とは何か、といえば、自分の人生を会社の意志で決めてきた人と、自分の意志で決めてきた人の、思考の在り方の「違い」です。

 多くの人の「ジブンガタリ」を聴いていると、少数ではあるのですが、自分の意志で自分の人生をつくり上げてきた、という人にも出会います。

 それはどういう人なのかといえば、一つは自分の意志でリスクの伴う転職を決行してきた人です。自分の人生をリスクの伴う自らの決断で決めてきた、という経験は、順調に過ごしているサラリーマンでは味わうことのない経験です。

 それが上手くいったかどうか、本人が自覚しているかどうかは別にして、非常に重要な痕跡をその人の思考姿勢の中に残していることが見えてくるのです。

 つまり、普通の会社員なら、多くの場合には向き合う機会のない、「働くとはそもそも自分の人生にとって何を意味することなのだろう」とか、「この会社で働くことが自分の人生にもたらす意味は何だろう」とか、簡単には答えの出ない問いと向き合わざるをえない経験をいつの間にかしている可能性がある、ということです。

■今、日本企業が最も必要としている力

 転職のような「人生の荒波にもまれる経験」はそのほかにもいろいろあります。もう一つの例でいうと、海外の子会社などで、重要な意思決定を自分の責任でせざるをえないような立場を経験してきた人もそうです。

 会社にもよりますが、日本にいるときとは違い、言葉も人種も商習慣も異なる厳しい環境の中で、本社からの余計な干渉が少ない代わりに、サポートもあまり期待できない状態を経験している、ということです。

 この人たちも、自分の意志で転職を決断してきた人と同じように、過去の経験から答えを簡単には導き出すことのできない、正解のない「問い」と向き合わざるをえない経験を知らず知らずのうちにしてきているのです。

 さらに付け加えれば、がんなどの重い病気や大けがで何カ月もの入院を余儀なくされてきた人、もしくは会社人生で降格、左遷といった大きな挫折を味わったことがある人なども、そうです。

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